アフリカの人が中国に留学する理由 .118

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●同僚が中国にMBAに留学

同僚の一人から突然、職場を辞めるんだと打ち明けられた。

彼は中国の北京にMBA留学をするという。中国政府の奨学金で行くのだそうだ。マラウイ人で海外でMBAを取得する人はそういないだろうし、彼のステップアップを祝福したい。他にも違う同僚の息子さんが中国の博士課程に留学しているという話も聞いたことがある。

中国に留学しに行くという話はアフリカで良く聞く。中国政府が奨学金を出しているからだ。このような自国への留学奨励制度は国家戦略としてとても重要だと言える。

●古代ローマでの「フルブライト奨学金」制度

古代ローマでは属州化したかつての敵国の指導層の子弟を、ローマに「留学」をさせていた。ローマの貴族の家で生活をしながら教育を受けるという良い待遇での招待だ。こうすることで将来、属国で指導層になる彼らをローマのシンパに育てることが出来る。ローマの文化や制度、人を理解させ、ローマに好感を持つようにするのが目的。

塩野七生はこの制度を指して現代で言えばフルブライト奨学金(http://www.fulbright.jp/grant/)だと述べている。フルブライト奨学金はアメリカに留学する人に支給される返済なしの奨学金だ。現在では日米両政府が財源を負担しているが、もともとはアメリカ政府のみが負担をしていた。優秀な人材をアメリカに留学させることで将来のアメリカの国益にもつなげるという思惑があることは間違いないと言えるだろう。

●中国のアフリカ留学生受け入れ

中国はまさにこのような自国への呼び込みをアフリカ大陸から積極的に行っている。マラウイではMSCEという高校卒業試験があるが、この成績優秀者は中国へのスタディーツアーか留学か何かの権利を得られるとして表彰されていたのをTVで見た記憶もある。

中国で生活をしたことがあるアフリカ人が自国に戻れば、彼らは中国とのパイプとなるだろう。政治のみならず経済的にも中国とのつながりとなるのは間違いない。もちろん奨学金に関しての恩義も感じるはずだ。

人材育成に関する調査研究(中国編)http://www.ovta.or.jp/info/investigation/china/index.htmlによると下記のような人が中国に留学後母国で活躍しているようだ。

”エチオピア連邦会議院の議長、Mulatu Teshome 氏。彼は中国に3回留学し、北京大学で博士号を取得した。次に赤道ギニアに民主党国際部主任、Mauricio Mauro Eku Obama 氏は、1994?99 年まで復旦大学で国際関係修士号を取得した。ザンビアのCharles D Phiri 氏は1972?74 年まで北京交通大学で工学を学び、中国支援のタンザニア・ザンビア鉄道の責任者になった。現在270 名以上の留学生が、タンザニア・ザンビア鉄道の指導的地位で従事している。ケニアでは2003 年4 月に帰国した留学生が集まって「ケニア中国同学会」が結成された。”

●日本のアフリカ留学生の受け入れ

このサイト(http://www.chinaafricarealstory.com/2010/09/how-many-africans-are-studying-in-china.html)によると2012年の時点で、中国は年間5,500人のアフリカのからの人に奨学金を出しているとある。自費も含めると20,000人以上の留学生が中国にいるとある。

一方、2013年に日本が受け入れていたアフリカの留学生の数は1,155人となっている。(http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data13.html

世銀の出している2013年のGDPランキング(http://data.worldbank.org/data-catalog/GDP-ranking-table)では中国は924兆円でアメリカに次ぐ第二位、日本は490兆円で三位だ。

経済規模を考慮すると中国に対して日本のアフリカ留学生の受け入れが少ないと言える。勿論ただ受け入れれば良いというわけではない。留学生の質を確保したり、治安上の問題なども考える必要性がある。

留学生の受け入れは長期的な投資と言える。国家として短期的にすぐに回収することは難しい。でも今後は「アフリカの世紀」が来ることを考えれば日本ももっとアフリカからの留学生の受け入れに投資をしてもいいんじゃないかなと思う

 

?かつろう

“アフリカの人が中国に留学する理由 .118” への2件の返信

  1. カツカツさん こんばんわ。
    中国のアフリカ進出については、いろいろ考えるところ
    (私は親中派です)
    中国のアフリカ進出 日記
    http://kazitabonita.blog133.fc2.com/blog-entry-8.html

    日本や欧米では、
    孔子学院の問題が、ちょっと話題(?)になっています。
    孔子学院もすごいよなぁ。日本の語学学校にはできないことが
    できちゃうんだもん。

  2. 美術の視点から中国のアフリカ進出を見るのは新鮮ですね。
    つい政治と経済が注目されがちですが、こういったアングルから見るのもとても興味深いすね?

    孔子学院、すごいですよね。
    ケニアのナイロビ大学に行ったときに、建物に専用の一角があってなんだこれは!と同時に中国すごいなーと思った記憶があります。

    政治、経済のみならず、芸術、そして教育までもかなり世界的に大きな影響力を占めていますね。
    僕自身も上海に留学していたので中国の事はとても好きなので、日本と中国、アフリカ、皆が仲良く共存できる関係を築ければいいなと思います。

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