●PSIとはなにか
PSIとはPopulation Service International(ポピュレーション・サービス・インターナショナル)という1970年に設立されたアメリカのDCに本拠を置くNGOになります。(http://www.psi.org/)もともとはファミリープランニングを中心とした活動をしていた為、この名前になっています。しかし現在ではファミリープランニングに限らず保系衛生分野で幅広く活動しています。
世界69か国でプログラムを展開しています。予算規模は全世界を合わせると2012年で546億円となります。ドナーはUSAIDやDFID、KfWといった欧米の政府機関などが中心となります。
活動分野はHIV/AIDs, マラリア、水やサニテーション、リプロダクティブヘルス、呼吸器疾患など保健関係で多岐に渡ります。
●ソーシャルマーケティング
PSIが他のNGOと一線を画すところがこの「ソーシャルマーケティング」です。どういうことかというと民間企業が用いるマーケティング手法を非営利活動にも活用することでインパクトを生み出しているということです。
PSIは実は単にNGOとしてプロジェクトを運営するだけではなくて、保健衛生製品の販売を行っています。コンドームや蚊帳、経口補水液といった物を無料配布でなく販売することで持続可能性を保つことに繋がります。単に配布するだけでは資金が尽きれば終わりますが、コストをカバーできるように販売すれば持続性を持つことが出来るということです。また価格を安く抑えることによって低所得の人や農村部の人にとって手が届くようにしています。
この過程で民間企業が使用するマーケティング手法を用いているのです。例えば顧客をしっかりと捉えるためにペルソナマーケティングを行ったり、販売戦略のために4Pを用いたり、もちろんブランド構築のためにはブランドポジショニング、ブランドパーソナリティ、ブランドエグゼキューションといったことも立案します。無料配布プロジェクトを行う際もパッケージをデザイン等ブランディングをすることで製品の価値を高め、使いたいというモチベーションをあげたりしています。つまり物販だけにとどまらずNGOとしての非営利プロジェクトにおいても民間企業の考え方や手法を用いているのです。
このビジネスの手法をソーシャルな分野にも活かすという視点が一般的な他のNGOとの大きな違いになります。
●PSI/Malawi
ではPSI/Malawiの説明をしたいと思います。1994年、つまり初代大統領のカムズ・バンダ政権が終わったのちに設立されました。2014年で20周年になります。本部は首都のリロングウェにあります。ブランチが商業都市ブランタイヤ、ムズズ、マンゴチにあり計4つの事務所も持っています。スタッフは200人程で予算規模は年間18億円くらいです。実施しているプログラムはHIV/AIDs、マラリア、水とサニテーション、リプロダクティブヘルス等になります。
マラウイ人の他にスコットランド人、アメリカ人、ジンバブエ人、エチオピア人、ネパール人、日本人(自分)などがいて国際色豊かな職場になっています。英語もバリバリ、仕事もバリバリな環境です。本部からマーケティングの専門家が来てマーケティング戦略の策定のお手伝いをしてくれたりもします。またDCの本部や他国のPSIとも頻繁にメールのやりとりをして連携を取っています。
組織としては大きく分けると3つに分割することが出来ます。まずは管理部門です。人事や総務、ファイナンス、監査といった部署です。次はプロジェクト部門です。HIV/AIDSやマラリア等具体的なプロジェクトを運営する部門です。そして三つ目がソーシャルマーケティングの視点からプロジェクトを支援する部署です。リサーチ部門、コミュニケーション(広報・クリエイティブ)部門、セールス部門があります。
●僕のやっている仕事
僕はマーケティングという職種で2013年10月からPSI/Malawiに派遣されています。マーケティングって実はかなり幅広い意味を持つ言葉で、その言葉通り幅広いことをしています。
営業マンの研修、営業レポートの作成といった営業に関する仕事をはじめ、市場のリサーチ、製品のブランディング、クリエイティブブリーフの作成、プロモーションの企画・実行、原価計算、プライシング、ドナーレポートのための現地取材、新製品の企画や導入など本当に幅広く仕事をさせてもらっています。最近では購買部署の効率化という仕事にまで取り組んでいるのでまさになんでも屋になってます。
色んな仕事を与えてくれる今の環境に本当に感謝しきれません。仕事の報酬は仕事とはいいますが、本当に仕事をもらえることが有難いなと感じます。
後任要請としてはTunzaというプライベートクリニックのネットワーク事業が出されています。これ自体もとても面白い仕事だと思います。ただしこれに限らず個人の適性に合わせて幅広い仕事がどんどん与えられると思います。
●一日の生活リズム
朝6時起床。6時半に家を出発。30分程ミニバスに乗って通勤。7時30分より業務開始。12時昼休み。13時再開。17時終業。とまさに日本のサラリーマンのような生活です。ただし金曜日は7時30分から13時30分までの業務で終了となります。これを足し合わせると、月から木は8.5時間×4=で34時間、金曜日は6時間で、合計週40時間になります。実はPSIはグローバル基準で週40時間と決まっているのでそれに合わせての就業時間になります。
また金曜日はカジュアルフライデーといって、カジュアルな服装での出勤が許されています。普通の日はスーツ出勤です。会議室にバランスボールが置いてあったり、壁には偉人の言葉がペイントされていたりと欧米ナイズされた職場でもあります。
マラウイは普通お昼休みは2時間あったりします。PSIは1時間だけなので他に比べると若干あくせくしている職場ともとれるかもしれません。
●こういう人におススメ
・インターナショナルNGOで仕事をしたい。
日本ではPSIの知名度は低いですが、他の国であればそれなりに知名度はあります。組織としてもとてもしっかりしているのでインターナショナルNGOで仕事をしたい人にはとても良い職場だと思います。
・英語でバリバリ仕事がしたい。
皆英語バリバリです。僕自身協力隊に応募する際に、手前味噌ですがTOEICが900点あり、訓練所でも他の誰よりもしっかり勉強したつもりだったので、少しは通用するだろうと思ってマラウイに乗り込んできましたが、ばっきばきにされました。全然英語について行けませんでした。今でも毎日英語を勉強しています。この組織で2年間やれば間違いなく英語能力が伸びると思います。ちなみに現地語のチェワ語は僕は諦めました。
・ソーシャルアントレプレナー/社会起業に興味がある人
PSIはNGOの側面と営利組織の側面、両方を持ち合わせています。純粋なNGOとしてのプロジェクトも運営していれば、純粋なドナーからの支援のない製品の販売もしています。その中間としてドナーからの支援のある製品の販売なども行っています。営利、非営利、その双方の中間点、第三セクター的なものに興味がある人はとても勉強になると思います。
・途上国でもバリバリ仕事がしたい
協力隊はややもすると、配属先で仕事がないということに陥ります。やることもなく田舎で日々、時間を浪費する、そういう心配もあるかもしれません。PSIではそういった心配はまずありません。仕事は常にありますし、認めてもらえればどんどん仕事をもらうことも出来ます。途上国でバリバリな仕事をしたいという人にはおススメです。
・アフリカで仕事がしたい
アフリカで仕事がしたい人にはもちろんおススメです。なんてったってマラウイですから。マラウイはアフリカでも最も進んでいない国の1つです。そんなザ・アフリカで仕事が出来る貴重な機会だと思います。
●こういう人にはおススメできない
・現地に入り込んだ密着した活動がしたい
基本的に勤務は首都のオフィスになります。ワイファイも飛んでいるような環境です。他の協力隊の人に比べて現地に入り込むという面では弱いといえます。もちろん出張で農村部に行き、取材やリサーチをする機会はあります。ただしそこに生活をするということはないので、そういった要素を求めた場合は難しいと言えます。
・途上国でゆっくり仕事がしたい
結構みんなあくせく仕事してたりします。途上国でゆったりとしたいという気分がある人にはおススメできません。周りもバリバリな人が多いです。
・0から1を創りだす仕事をしたい
PSIは組織として機能している団体と言えます。もちろん新しい提案をして仕事を創りだすことは出来ます。ただし、あくまでもそれは組織の仕事ありきの話です。まずはプロジェクトや受益者ありきです。そういった意味では新しい家を建てるということではなくて、今ある家の修繕や改善、離れの増築といった仕事になります。なにもない更地に家を建てるという仕事はコミュニティ開発では多いと思います。特に新規案件であれば自分で切り開いて行かないといけません。そういった開拓者精神を優先するのであればコミュニティ開発の案件をおススメします。
●募集要項についての補足
・社会経験
募集要項について補足ですが、社会経験3年以上としました。実は多くの専門職種の場合、実務経験と記載されます。実務経験とは当該業務における経験のことで、社会経験とはその業務でなくとも社会人としての経験全般のことです。もちろんそれに類似する業務を経験しているにこしたことはないのですが、その経験よりもその場その場での適応能力を重視して社会経験にしました。
実際マラウイの環境は日本での仕事環境とは全く違います。日々、問題が起こります。そして日々新しいことを学んで行かないといけません。そういった中で重要なのは実務経験ではなくて、幅広い人間としての対応能力だと思いました。なので特記事項にも店舗運営の経験、営業、マーケティングの経験があることが望ましいというようなあいまいな表現を使ったのです。
今現時点での能力というよりは、合格してから、訓練中、そしてマラウイに派遣されてからどれだけ頑張って勉強して、日々真摯に仕事に取り組んでいけるかということの方が大切だと、僕は考えています。
・住環境
電気・水道が不安定となっていますが、マラウイ国内では首都でもあるのでかなり安定している方です。停電や断水はまあ結構おこりますが、そこまで深刻ではないです。1?2時間で回復することがほとんどです。またインターネットも職場にワイファイが飛んでますし、家でもドングルというUSB差し込み式の機器を使えば問題なく使えます。
●最後に
僕は協力隊に来るかどうか、正直悩みました。周りからもとてもネガティブな意見が多かったです。協力隊というと途上国のよくわからないところでよくわからないことで、フラフラ2年間を浪費し、そんでもって変に途上国行ってきたプライドを持っていて、ウチワネタの好きな変な人たちの集まり。悪くいってしまえばそういうイメージが僕自身、そして周りの人にもありました。これを全部否定することは出来ません。実際活動をしっかりしていない人もいるでしょう。したくても上手くいかない人もいるでしょう。2年間、浪費だったと感じる人もいるかもしれません。
しかし今1年が経って思うことは、PSI/Malawiで仕事が出来て本当に良かったということです。こんなに勉強になって成長できる経験はなかなか出来ないなと。思えば学生の頃インターンでお世話になった事務所、大学のゼミ、社会人として勤めた会社、その後お世話になった日本のNGO、そしてこのPSI/Malawi、本当に環境に恵まれてきたなと思います。どの組織でも本当に自分を大きくすることが出来ました。まさにラッキーの連続だったなと思います。PSI/Malawiはそんなラッキーな僕が引き当てた組織の1つです。間違いなく一回りも二回りも大きく成長出来る環境です。
“If opportunity doesn’t knock, build a door. “
かつろう