先週の金曜日アフリカビジネスカンファレンス(http://www.lbsabc.com.ng/)に参加してきた。同カンファレンスは僕が通っているラゴスビジネススクールが毎年主催しているイベントだ。MBAの学生が中心となって企画運営を行う。リンクを張ったウェブサイトもクラスメートが作ったものだ。直前は授業中にPHPの内職をしたりしており、皆結構頑張っていた。参加企業や、参加者とのネットワーク構築や、学生同士のチームワーク向上にも繋がるのでMBAでこういったイベントを企画するのは面白いなーと。
プログラムとしては基調講演+興味のあるパネルセッションへの参加+ネットワーキングといった内容だった。パネルはセッションはファイナンス、農業、メディア、製造業、起業、テクノロジーといった内容で分かれていたのだが、テクノロジーのセッションに参加した。
パネリストは3名。JumiaのCEO、グーグルナイジェリアの人、そしてDalbergからの参加者。Jumia はナイジェリアで2012年に出来たアフリカにおけるインターネット界のガリバー的な存在だ。楽天市場のようなマーケットプレイスを基軸に様々なウェブサービスを展開している。ケニアやウガンダにも進出しており、ウガンダにいた時は宅食サービスのJumia Food(旧Hellofood)をよく利用していた。ウェブ上で近隣レストランに注文でき、指定した住所まで届けてくれるというとても便利なサービス(唯一の不満は宅配レストランの中に大好きなケンタッキーフライドチキンが含まれてなかったこと。もちろんこれはKFC側の問題なのだろうけれど)。 Dalbergは途上国の開発や協力関係に強い戦略コンサルティング会社だ。南アフリカのケープタウン大学のMBAにいた時もリクルートで学校に来ていた。アフリカでのプレゼンスは高い。
まず最初に特筆すべき点は3人とも女性だったという点だ。テックやコンサル系の重要な役職についている人が女性。付け加えるならば、ラゴスビジネススクールの学長(Dean)も女性だ。日本ならこういった役職には男性がつくことが多いと思う。絶対数は多くないかもしれないが、実はアフリカでは女性が重要なポジションで仕事をしていることが多い。例えば僕が青年海外協力隊時代に所属していたPSI MalawiというグローバルNGOの当時のトップは女性、プログラム統括も女性だった。そして3つのプログラム(エイズ、マラリア、ファミリープランニング)の内2つは女性がヘッドだった。(ただしトップの女性はスコットランド人、プログラム統括はアメリカ人といった具合に海外からの赴任者も多い)。このように途上国で女性が重要な地位につくことが多いが、恐らくその要因としては基礎的な英語力があるのではないかと思う。アフリカの国ではまず現地語があり、その上で公用語として英語やフランス語がある。一般的な公教育では小学校の高学年くらいから現地語に加えて英語での授業が行われる。教科書ももちろん英語。つまり英語が出来ないと他の教科の学習効率が著しく低下する。女性は男性に比べて比較的語学学習力が高いと思われるので、結果的に他の教科も吸収が良くなるのだと思う。英語はダメだが他の教科で巻き返すといったことが日本では可能だと思うが、理解も設問も英語であるのでそういったことはアフリカでは難しい。
セッションの中で気になるポイントがいくつかあったので以下箇条書き。
- Jumiaのマーケットプレイスでは70%のアクセスがモバイルのAppから。また平均滞在時間はモバイルの場合9分ほどでラップトップなどPCの場合は5-7分と滞在時間でもスマホの方が長い。
- Jumiaのマーケットプレイスで購入するとラゴスなら1日以内に届けてくれる。オンラインショッピングが発展する背景にはラゴスのひどい渋滞がある。人と車が爆発的に増えてインフラ設備がおいついていないラゴスでは慢性的にひどい渋滞があり、買い物に行くのも一苦労なので、オンラインショッピングでの商品のデリバリーの付加価値が高くなる。
- グーグルの調査によるとスマホを一日に使う回数は平均で150回。モバイル(スマホ)がコミュニケーションのポイントオブエントリー。SEMなどオンライン戦略を考えるときもまずはモバイルが重要。
- 会場に来ていたとあるマイクロファイナンス組織の顧客は70%以上がミレニアム世代で多くがスマホを保持している。課題は、いかにしてテクノロジーをマイクロファイナンスに組み合わせて、顧客に使ってもらえるか。
- ナイジェリアでのビットコインの将来は政府がどういった見解をするかによるところが大きい。(ナイジェリアは政府もしくは中央銀行の力が大きい)。
- グーグルは今後はモバイルファーストからAIファーストに変わって行くだろう。
先進国と途上国はインターネットの発展の仕方が違うと言う。先進国ははじめPCから入って、スマホに移行したけれど、途上国はPCを飛ばしていきなりスマホから入るということ。これはまさにその通りで、上記の内容からも読み取れると思う。モバイルを制すものがアフリカを制すと言えるかもしれない。援助も徐々にモバイルテックの重要性が増していくのではないかと思われる。例えばマイクロファイナンスや国際協力の裨益者は今はSMSと通話機能しか持たない携帯電話を所持していることが多い(もしくは何も持っていない)ことが多いけれど、今後20~30年でミレニアム世代が支援の中心になる際はスマホを持っている人が多くなることが予想され、医療にせよ送金にせよ、スマホなどモバイルテクノノジーを使った支援が肝となるはずだ。ビットコインに関してはタイムリーな記事(https://www.nigeriatoday.ng/2017/03/central-bank-of-nigeria-says-we-cant-stop-bitcoin/)を見つけた。ビットコインなど仮想通貨に対して難色を示していたナイジェリアの中央銀行が、緩和の方向に向かいそうだ。
3者が強調して唱えていたのは問題を解決するためにビジネスが、そしてテクノロジーがあるという点だった。Jumiaの商品配送があれば渋滞を減らせるし、モバイルテクロジーが発展すれば支援が発展する。ビットコインを使えば国際間の送金がスムーズに安く行える。そういった視点をもっているビジネス界の人が増えて、ビジネス界が成長しどんどん力を持って国の中で発言力を持てるようになれば、汚職にまみれた政治の力を削ぎ、正せるかもしれない。
かつろう(@ka26oo)