●人身売買の4Pフレームワーク
ビジネスのマーケティングの世界では3Cや4Pといったフレームワークがある。
Company, Competitor, Customer, (自社、競合他社、顧客),
Product, Price, Place, Promotion,(製品、価格、販売チャネル、広告プロモーション)
といったものだ。
自社の製品やサービスを考える時の基本的な枠組みとして使用できる。
国際協力の人身売買問題にも4Pというフレームワークがある。
Prevention(予防):人身売買問題が起こる前の段階で防ぐための対策を打つこと。
Protection(救助・治療・回復):人身売買の被害者を救出しreintegrationすること。
Prosecution(法執行):法律の整備や有罪判決等取り締まりや裁判を強化すること。
Policy(政治・権力・アドボカシー):政治的な力や働きかけによって上記等を推進していくこと。
MECE(もれなくダブりなく)という観点からは少し使いづらいフレームではあるが、
ある程度問題解決の活動を分類でき、わかり易い枠組みである。
最近は青年海外協力隊でマラウィに派遣される関係で保健衛生、
特にHIV・エイズ問題について文献を読んだり、人に話を聞いたりして情報を収集している。
そして最近はHIV・エイズの問題も3つに分割して考えられるのではないかと思っている。
HIVに感染する前の予防、感染した後の治療、そしてHIV陽性者の権利保護だ。
もちろんこれ以外にもエイズ患者の子供の問題等もあるが
大枠としては3つで捉えられるのではないか。
●フレームワークの各要素の関連性
また上記人身売買やHIV・エイズのフレームワークの
各要素は独立しておらず互いに関係性を持っている。
例えばProtectionにあたる被害者の保護・ケアが進めば裁判での証言を促進することができ
Prosecutionの力を強め、その結果として有罪判決率が上昇すれば
そもそもの犯罪件数が減っていきPreventionに繋がる。
HIV・エイズの問題に関しても陽性者の自助グループがコンドームの販売・配布を行うことで
彼らの権利の啓発になると共に、感染の予防に繋がる。
●フレームワークのメリット=大局観
このようなフレームワークを使用することのメリットの一つが大局観を得られることだ。
大局観を持てば自分、もしくは自分が所属する団体が行っている活動は
問題解決のバリューチェーンの中で一体どこに位置するのか
ということを理解することが出来る。
それを理解することで他の団体との有機的な連携を意図的に起こせるようになるはずだ。
●大局観を持つ=ミッションに忠実になれる
また大局観を持つことでミッションに忠実になれると思う。
例えば人身売買問題を解決するというミッションを持っていたとして、
自団体がProtectionという領域の機能に特化していたとする。
しかし全体を見渡して考えたときにProtectionをいくら行ったところで
被害者の数は減らないということが分かった時は事業領域を変更すべきだ。
Prosecutionを行うことが真に問題解決に繋がると気づいたならば
そこに団体の活動を変更するべきだ。
(もちろん団体のミッションが抽象的に問題を解決するということではなくて、
“学校をつくる”というように行動それ自体になっている場合は難しいだろうと思う。)
そのように事業領域を変更するということは大局観をもって問題を捉えないと出来ないことだ。
またこのような事業領域の変更はビジネスの世界でも必須である。
現状行っている事業が時代の流れを考えたときにミッションと合致しなくなったり、
収益を上げることが出来なくなった場合は撤退戦略をとり、
コアとなる技術やリソースを展開できる違う事業領域に参入するべきなのだ。
それをせずにいつまでも昔の栄光にすがって同じ事業しか出来ないようであれば
行きつく先は言わずとも見えている。
●締めくくり:進化・変化する組織こそ
NPOであれ、企業であれ、常に自らのミッションに忠実にある必要がある。
ダーウィンは進化するものこそが生き残ると言ったそうだが、
本当に価値を世の中に創出できる組織というのは常に自らの活動に疑問を投げかけ、
そして変化・進化をし続けられる組織を言うのではないか。
かつろう