今回はマラリア治療についての現状について書きたいと思います。
ハマダラ蚊の薬による耐性の進化によって現在、最も有効な薬であるアルテミシニンが効力を失いつつあります。
●マラリアって何?
まずマラリアというのはマラリア原虫によって引き起こされる病気です。熱や吐き気を引き起こし、脳マラリアなど時には死に至ることもあります。
原虫には5種類いるのですが、その内、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされるものが最も危険です。
そのハマダラ蚊が媒介となってその原虫を人から人へと運びます。
●治療方法
現在マラリアに対して最も有効な治療薬はACTと呼ばれる方法になります。これはArtemisinin-Combination Therapiesの省略になります。アルテミシニンというのは薬の成分の名前です。アルテミシニンだけの単薬投与ではなくて、これに併せて他の有効成分も併せて投与するというのがこの両方になります。
マラウイでもスイスのノバルティス社が製造しているコアテムという薬を、私が所属しているPSIというNGOが販売しています。このコアテムの成分はArtemetheというアルテミシニンに由来する成分20mgとLumefantrine120mgを合わせた薬になります。この二つの成分の頭文字を合わせてマラウイではLA「ラ」と呼ばれています。
アルテミシニンについては詳しくは下記をご覧ください。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%83%B3)
長年、中国に制限をされていた秘薬というとなにかロマンのようなものを感じないでもないです。
●治療薬の歴史、ハマダラ蚊の耐性の進化
かつてはキニーネやクロロキンといった薬が治療の主戦力でした。しかし近年では上記のようにアルテミシニンに移っています。どうしてこのようなことが起こっているのでしょうか。
ハマダラ蚊が薬に対して耐性を持ち始めたからです。ハマダラ蚊の薬物耐性が生き残るために進化したのです。
その結果、薬はどんどんと変わり今のアルテミシニンに辿りついたというわけなのです。
●アルテミシニンにも耐性が報告されはじめた
そして恐るべきことはこの最終兵器アルテミシニンに対しても耐性をもつハマダラ蚊が確認され始めているのです。カンボジアとタイ、カンボジアとベトナム、タイとミャンマーの国境付近で報告がされているようです。
残念ながら現段階でアルテミシニン以上の効き目を持つ成分は発見されていません。
●ハマダラ蚊の耐性の拡大
このハマダラ蚊の耐性の拡大は過去の耐性とどうようだとすると、西方に拡大していくようです。最終的にはアフリカに到達すると予想されます。
●今後の影響
アルテミシニンに耐性をもったハマダラ蚊の生息域が広まれば、間違いなくマラリアによる死者が増加します。そしてこれは現地に住んでいる人だけの話ではありません。日本人を含めた外国人がマラリアにかかった時に有効な手立てがなくなってしまうという可能性を含んでいます。
対策としては掛かる前に予防薬を常に服用しておくことが重要になると考えられます。ちなみにマラウイの青年海外協力隊員はメフロキンという薬の予防のために服用をしています。
特にカンボジアやタイ、ベトナム、ミャンマーといった東南アジアにお住いの方また渡航される方は、最終兵器アルテミシニンでもどうにもならない可能性があるということもしっかりと留意して、防蚊対策には最新の注意を払って下さい。
かつろう
参照リンク:http://edition.cnn.com/2014/03/25/health/scientists-eliminate-malaria/
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