日本には国家の下に都道府県、市町村があります。
今回はマラウイではどのような統治・行政区分があるのかを説明したいと思います。
【統治・行政区分の全体像】
●村
まず最小単位は村、ビレッジになります。ここの長が村長、ビレッジ・ヘッド(VH)になります。このビレッジヘッドは数百人から数千人単位を統治します。
●村の集合体
いくつかの村が集まってグループ・ビレッジと呼ばれるものを構成します。この長はグループ・ビレッジ・ヘッド(GVH)となります。10?20くらいの村を統治します。この規模になると最大数万人単位を統治することになります。
●トラディショナル・オーソリティ(TA)?
そしてグループ・ビレッジが複数集まって形成されるのがトラディショナル・オーソリティ(Traditional Authority、略してTA(ティーエー)と呼ばれます)となります。このTAは土地の名前であると同時に、そこを治める人の名前でもあります。土地の名前=権力者の名前になるわけです。統治する人数は数万人から多い場合だと20万人を超えることもあります。
●ディストリクト
行政区画としてはトラディショナル・オーソリティの上にディストリクト(District)、つまり県が存在します。このディストリクトのトップは、ディストリクト・コミッショナー(DC)と呼ばれます。ちなみに現在は28のディストリクトが存在します。
●リージョン
そして全てのディストリクトは北部・中部・南部のいずれかのリージョン(Region)に区分されます。北部には6、中部には9、南部には13のディストリクトが存在します。ただし各リージョンごとに権力が付与されていたり、統治者がいるというわけではないようです。ですのであくまでも地域区分としての役割のみを果たしているというわけです。
ちなみに選挙人登録(有権者)の数は北部100万人、中部300万人、南部300万人となっており、中南部が政策的にも重視される傾向にあります。北部はそのせいもあって開発が遅れています。
【統治者】
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●パナマウント・チーフ
マラウイには複数の部族が存在します。チェワ族、トゥンブカ族、ヤオ族、トンガ族等です。この民族のトップに立つのがパナマウント・チーフと呼ばれる部族長になります。TAの上にパナマウント・チーフがいるというイメージです。
●伝統的権力者
ビレッジ・ヘッド(VH)、グループ・ビレッジ・ヘッド(GVH)、トラディショナル・オーソリティ(TA)、パナマウント・チーフは単にチーフと呼ばれることもあり、伝統的な権力者になります。基本的には終身制で死ぬまで交替することはありません。
このうちパナマウント・チームはTAの中から選ばれるようです。他のVH,GVH,TAは血縁で選ばれます。血筋を持った複数の家族で順番に継承されるようです。例えばAさんという村長さんが亡くなった場合、Aさんの息子は村長にはなれません。Aさんの兄弟であったり、Aさんの兄弟の息子であったりと違う家族に村長は回されます。そのように複数の家族でローテーションをしていくことになります。
ちなみにこの伝統的権力者には女性がつくことも少なくありません。前GVHが亡くなって、その妹がGVHになるというようなケースがあります。
●ディストリクト・コミッショナー
ディストリクト・コミッショナー(DC)は伝統的な権力者ではありません。中央の政府より派遣されてくる役人です。大卒で教養がある人になります。また任期は数年なのでその地方に土着的に権力を保持するというわけでもありません。ただし、DCがTAに給与を与えているという話も聞いたことがあるので、それなりに影響力もあるようです。
ただし基本的にはTAやパナマウント・チーフといった伝統的な権力者の方が影響力は高いようです。例えば僕自身リサーチで村などに入ることもあるのですが、まずはその村の村長さんやGVHに承諾を取ってから調査をさせてもらうことになります。彼らがYesと言わないことには何もすることは出来ないのです。
このようにマラウイでは伝統的な権力者による統治と、中央政府からの区画による統治が組み合わさっているのです。
次回はこの伝統的権力の統治構造の弊害について書きたいと思います。
【⇒Vol.83 伝統的権力構造の弊害】
かつろう
参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Districts_of_Malawi
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こんにちは。
アフリカを始め地方分権化が進む途上国の国々。
「伝統的権力」をもった人の役割の大きさ。
面白いというか、一筋縄でいかないというか。
この伝統的権力が上手く働けば国は発展するのでしょうね。ただ往々にして保守的なので改革等をする際には障害となることが多そうですね。
途上国でプロジェクトを回すときに彼らを如何にうまく活用するかということが大切な気がします。