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◆今回は下記に貼ったリンク先を訳して記事を書いているので気になった部分は原文を参照してください。◆
割礼と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。アフリカ等で行われる伝統的な性器切除というイメージを強いのではないでしょうか。伝統的なものとして男性の場合は包皮切除、女性の場合は外性器の切除や膣の入り口の縫合等を言います。
実は男性の割礼がHIVを防ぐ手段として効果があると認められているのです。UNAIDSやWHOもこれを奨励しています。
僕が青年海外協力隊として配属されているPSI(Population Service International) MalawiにもHIVの部署の中にVMMCという部門があります。これはVoluntary Medical Male Circumcisionのことで任意の元に医療行為として行われる男性の割礼のことです。
●男子割礼とは
包皮切除のことを言います。包茎手術と同じようなものだと考えられます。ペニスを覆っている皮の部分を取り払うということです。
●具体的な研究結果
アフリカで1万人以上を調査した研究があります。まず対象者を2つのグループに分けます。片方のグループには割礼を行います。もう一つのグループには行いません。どちらのグループにもHIV予防についてのカウンセリング等を行います。そしてそれぞれのグループのHIV感染率を追跡調査します。結果は下記のようになります。
・南アフリカ
対象者:3274人
結果 :割礼をした人の感染率が、割礼していない人に比べて60%低かった。
・ケニア
対象者:2784人
結果 :割礼した人の感染率が、割礼していない人に比べて53%低かった。
・ウガンダ
対象者:4996人
結果 :割礼した人の感染率が、割礼していない人に比べて51%低かった。
ケニヤとウガンダでは結果が明白なのにこれ以上非倫理的な実験を続ける必要はないと、途中でリサーチが中止されたようです。
どちらにせよ最大で60%、少なくとも50%はHIVの感染が防げるという結果が1万人以上を対象にした研究で出ているということです。
●男子割礼がHIVを防ぐ原理
・包皮内にはT細胞が残る。
HIVはT細胞等の免疫細胞細胞に感染して破壊し、免疫機能を奪うウィルスです。包皮が残っている状態では、包皮の内側にT細胞が残っており、そこにHIVが感染するようです。
・性器潰瘍のリスクを減らせる。
包皮切除によって性器が潰瘍になるリスクを減らせるようです。そしてこの潰瘍はHIVに感染するリスクを高めます。つまり潰瘍のリスクを減らすことでHIVのリスクを減らせるのです。また他の性感染症のリスクも減らせます。
・粘膜の表面積を減らせる
粘膜についた傷からもHIVは感染します。そして包皮が残っていると包皮の内側等、傷がついて感染のリスクを高める粘膜の面積が多いということになります。面積を減らせることによって感染の可能性を減らせるということだと思われます。
他にも包皮が取り除かれ亀頭の粘膜が角質化する為、等の理由もあるようです。いずれにせよ複合的な要因によってリスクが低減されているものと考えられます。
●女性や男性同士のセックスと割礼
上で見てきたように、女性から男性への感染は割礼によって防げます。しかし男性から女性への感染率については効果があまりないようです。男性同士のセックスについても、受け入れる方から挿入する方への感染リスクは低減できるようですが、その逆に関しては効果が見られないと考えられます。
しかし直接的に感染のリスクを低減することが出来なかったとしても、割礼によってHIVに感染している男性の数が減ることによって、二次的に女性に対する感染のリスクが低くなるということは言えます。
●まとめ
包皮切除は一度行えば、永続的に効果を持つ対策であるという面では大きな利点を持っていますが、根本的な感染を防ぐ対策にはなりません。もちろんコンドームに比べれば効果は少ないです。
逆に、包皮切除を行えばHIVに感染しなくなる、だからコンドームを使わなくてもいいんだと曲解する人も出てくる可能性があります。その場合は感染症だけではなくて妊娠のリスクも高めてしまうことになります。
単に割礼を広めるということを行うだけでなく、HIVと割礼に対する正しい理解や他の予防策、そしてファミリープランリングといった他の課題とのリンクなども考えて包括的にプロジェクトを組み立てる必要があるようです。
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