南アフリカ旅行記6 航空会社のブランディング比較 .133

南アフリカに行った際に3社(Kulura, 南アフリカ航空, マラウイ航空)の航空会社を利用しました。それぞれの航空会社についてブランディングの観点から比較してみたいと思います。Kulura社と南アフリカ航空はケープタウン-ヨハネスブルグ間で競合関係にあります。

●ブランディングとはなにか

ブランドとは「ブランド(英: brand)とは、ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。」とwikipediaにあります。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89

言ってみればその会社、サービス、製品等が持つアイデンティティのことです。ロゴやキャッチフレーズ(タグライン)、想起するイメージといった複合的な概念がブランドといえます。

そのブランドを構築して価値を創造する作業をブランディングと言います。

●Kulura(クルラ)

とても印象的だったのがKulura社(http://www.kulula.com/)です。

・緊急対応時のパンフレット

飛行機に乗ると、緊急対応時のパンフレットが座席の前のポケットに入っています。脱出口の場所や脱出の仕方、ライフジャケットについて等の説明が書かれた簡単な冊子です。

クルラ社の表紙がこちら。

ノリノリ!!なCAさんが写っています。

そして中身がこちら。

一見すると脱出口を書いた普通のページ見えるのですが、左上の英語が「一度に何人の人が滑り台にのれるかという世界記録に挑戦したい気持ちは抑えてください。」とボケ仕様になっています。

ライフジャケットのページもこんな感じです。「クールなイエローのライフジャケットはレトロなファッションアクセーサリーみたいに膨らみます。」

こんなにしっかりとふざけた緊急パンフレット初めてです。笑 パンフレットの目的はしっかりと内容を理解してもらうということなのでこういう面白みを加えることで読んでもらい、注意を払ってもらうというのはありだろうなと思いました。

・機内

クルラは機内食はでないです。食べたければ料金を払わないといけない。また席の間隔も狭く、窮屈です。

・価格

ただしクルラの航空券はとても安く、LCCの1つといえます。

・機体

機体は緑色でカラーリングされています。派手派手しくて目立ちます。

・ブランディング

パンフレット、機内の様子、機体の様子、価格帯などから考えるに、クルラにはしっかりとしたブランド戦略があると思います。トーン&マナー(イメージカラーとかロゴとか、フォントとかの統一性のこと)は緑色で、ブランドパーソナリティ(ブランドを人に例えて性格を持たせてブランドの想起をより具体的にする手法)は「フレンドリー」「ファン」、ブランドのポジショニングやコンセプトとしては「低価格のサービスを最大限に楽しんでもらう」とか、そんなブランディングをしているのだと思います。

●南アフリカ航空

南アフリカといえば南アフリカ航空(https://www.flysaa.com/mw/ja/)です。

・パンフレット

表紙はこちら。

中身はこちら。

クルラに比べてどうでしょうか。とてもシックな色で、内容もベーシックです。決してボケたりしていません。

・機内

ケープタウンとヨハネスブルグの間の2時間のフライトでも機内では軽食が出ます。これが物凄く美味しい。今まで食べた機内食の中でも1、2を争う美味しさ。席の間隔も広く、トイレに行くときにいちいち立たなくても前を通るのに十分なスペースがあります。CAも、リチャードギアのような渋くてかっこいいおっちゃんでした。

・価格

クルラに比べると高いです。というかクルラがLCCで安いだけで、南アフリカ航空は普通の価格帯と言えます。

・機体

とてもベーシックな塗装の機体です。

・ブランド戦略

南アフリカ航空にもブランド戦略が見受けられます。一貫して落ち着いた、安定的に質の高いサービスを提供しています。ブランドパーソナリティは「gentle」とかそんな感じに設定されてるのだと思います。

クルラはパンフレットで盛大にボケていました。しかし南アフリカ航空は全くぼけていませんでした。というか、ぼけれないのです、ブランド戦略上。そんなことをしたら一気に他の要素とのバランスが崩れてしまいます。また期待をけばけばしく塗装することも南アフリカ航空にはできません。そんなことをすると安っぽく見えてしまうからです。

逆に言えばクルラは自分たちの価格やブランドイメージを上手く利用してパンフレットや機体塗装に「楽しみ」の要素を上手く採りいれてると言えます。

●マラウイ航空

・パンフレット

パンフレットの写真は下記。

クルラや南ア航空とちがって表紙もなしの表裏の一枚ペラ。

・機内

機内食は出ますが、味に関しては正直微妙です。

・機体

中型機でプロペラがついています。

・ブランド戦略

恐らくマラウイ航空にはブランド戦略、ブランディングといった概念は存在していないと思われます。実は航空機の便名も独自にはもっておらず、エチオピア航空から借りているのでマラウイ航空を予約した場合、航空券の番号はET○○となります。オペレーションや収益、需要の創造等がブランディングよりも優先されているのかもしれませんし、そもそも経営者にブランドの重要性の認識が欠けているのかもしれません。何れにせよ、ブランドに対する投資が行われていないのは間違いありません。

●マラウイ航空はブランディングが必要ない?

クルラは低価格でサービスの質も下げなければならないという市場のポジショニングを取っている中で、それをうまくブランディングに活用しています。南ア航空はしっかりとしたサービスをしっかりとした顧客層に提供しているがゆえに「遊び」のあるブランディングはできません。低価格、低サービスのポジショニングを逆手に取った上手い企業ブランディングの例と言えると思います。マラウイ航空は予算や収益がないならないなりに、クルラのようにそれを逆に利用するブランディングなどをする必要があります。少なくともブランド戦略がなければ、サービスや顧客との接点の諸所に統一性がなくなり、顧客ロイヤリティを築くことも難しくなります。

と、ここまで考えたのですが、落ち着いてみればマラウイ航空に競合っていない気がしました。つまりマラウイ路線の需要的にマラウイ航空一社で需要を満たしているということです。地元の普通の人は基本陸路を利用しますし、空路は一部の人しか使いません。そして観光客もほとんど来ないので(多分来るとしても陸路が多い)外からの需要も低いです。このような状況下ではブランディングして、差別化を図り、顧客を呼び込むということ自体が必要ないのかもしれません。

如何でしたでしょうか。現在製品のブランディングなども行っているので今回はそれに絡めて航空会社のブランディングを紐解いてみました。普段、身の回りにある製品やサービスがどういうブランド戦略を持っているかということを考えることで、ポジショニングやタッチポイント、キャッチコピー(タグライン)といったマーケティングで参考にすることが出来るのではないでしょうか。

かつろう

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