マラリアが治療できなくなる?東南アジアは特に注意 .104

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今回はマラリア治療についての現状について書きたいと思います。

ハマダラ蚊の薬による耐性の進化によって現在、最も有効な薬であるアルテミシニンが効力を失いつつあります。

●マラリアって何?

まずマラリアというのはマラリア原虫によって引き起こされる病気です。熱や吐き気を引き起こし、脳マラリアなど時には死に至ることもあります。

原虫には5種類いるのですが、その内、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされるものが最も危険です。

そのハマダラ蚊が媒介となってその原虫を人から人へと運びます。

●治療方法

現在マラリアに対して最も有効な治療薬はACTと呼ばれる方法になります。これはArtemisinin-Combination Therapiesの省略になります。アルテミシニンというのは薬の成分の名前です。アルテミシニンだけの単薬投与ではなくて、これに併せて他の有効成分も併せて投与するというのがこの両方になります。

マラウイでもスイスのノバルティス社が製造しているコアテムという薬を、私が所属しているPSIというNGOが販売しています。このコアテムの成分はArtemetheというアルテミシニンに由来する成分20mgとLumefantrine120mgを合わせた薬になります。この二つの成分の頭文字を合わせてマラウイではLA「ラ」と呼ばれています。

「コアテム」

アルテミシニンについては詳しくは下記をご覧ください。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%83%B3)

長年、中国に制限をされていた秘薬というとなにかロマンのようなものを感じないでもないです。

●治療薬の歴史、ハマダラ蚊の耐性の進化

かつてはキニーネやクロロキンといった薬が治療の主戦力でした。しかし近年では上記のようにアルテミシニンに移っています。どうしてこのようなことが起こっているのでしょうか。

ハマダラ蚊が薬に対して耐性を持ち始めたからです。ハマダラ蚊の薬物耐性が生き残るために進化したのです。

その結果、薬はどんどんと変わり今のアルテミシニンに辿りついたというわけなのです。

●アルテミシニンにも耐性が報告されはじめた

そして恐るべきことはこの最終兵器アルテミシニンに対しても耐性をもつハマダラ蚊が確認され始めているのです。カンボジアとタイ、カンボジアとベトナム、タイとミャンマーの国境付近で報告がされているようです。

残念ながら現段階でアルテミシニン以上の効き目を持つ成分は発見されていません。

●ハマダラ蚊の耐性の拡大

このハマダラ蚊の耐性の拡大は過去の耐性とどうようだとすると、西方に拡大していくようです。最終的にはアフリカに到達すると予想されます。

●今後の影響

アルテミシニンに耐性をもったハマダラ蚊の生息域が広まれば、間違いなくマラリアによる死者が増加します。そしてこれは現地に住んでいる人だけの話ではありません。日本人を含めた外国人がマラリアにかかった時に有効な手立てがなくなってしまうという可能性を含んでいます。

対策としては掛かる前に予防薬を常に服用しておくことが重要になると考えられます。ちなみにマラウイの青年海外協力隊員はメフロキンという薬の予防のために服用をしています。

特にカンボジアやタイ、ベトナム、ミャンマーといった東南アジアにお住いの方また渡航される方は、最終兵器アルテミシニンでもどうにもならない可能性があるということもしっかりと留意して、防蚊対策には最新の注意を払って下さい。

かつろう

参照リンク:http://edition.cnn.com/2014/03/25/health/scientists-eliminate-malaria/

◆併せて読みたい記事◆

Vol.47 マラリアの基礎知識

Vol.65 男性の割礼とHIV/AIDS予防

Vol.61 マラウイの伝統的習慣とHIV/AIDSの問題

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コーラに学ぶ途上国マーケティング?おススメTED「NPOがコーラから学べること」? .103


今回ご紹介するTEDはマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツの奥さん、メリンダ・ゲイツさんのスピーチです。二人はビル&メリンダゲイツファンデーション(http://www.gatesfoundation.org/)を創り活動されています。積極手に途上国の問題解決に貢献しています。投資家として名高いバフェットが300億ドルの寄付をゲイツ財団に表明したことでも話題になりました。

彼女は途上国へ行く中で、どこにでもあるものに驚かされます。そう、コカ・コーラです。僕自身も色んな途上国を見て回りましたが、本当にどこにでもありました。そして価格も水よりも安いことも結構ありました。

コーラは世界で、毎日15億本提供されているとのことです。毎日、です。

彼女はこのコーラの行き渡り具合を、コンドームや医療品などパブリックセクターの製品やサービスに応用すべきだと言います。

そしてコーラがこれだけ途上国で成功出来ている要因を3つに分解しています。

●リアルタイムデータ


コーラは売り上げのデータを即座に収集、分析することで売り上げの低下などの問題があった場合にすぐにそれを修正することが出来ます

多くのNPOの活動は現状ではそれとは真逆で、即座にデータを反映させるような仕組みにはなっていません。NGOの多くは助成金(グラント)によって運営されています。例えばNGOからプロポーザルが提出された後、NGOとドナーは2年間のプロジェクトの合意を結びます。2年間で2億円をかけて、ある地域でHTC(HIV Testing and Counseling:エイズ検査のこと)とコンドームの配布を行うというような合意です。途中での振り返りはあるにはありますが、基本的にこの計画の大枠は2年間変更されません。プロジェクトが終わってから成果指標の変化を見るのです。例えばプロジェクト地域においてエイズ感染率が始める前のベースラインと比べて何パーセント低下したか、HTCに行った人の割合はどれくらい増えたか等です。

メリンダはこのNGOのプロジェクトの仕組みを、暗闇でボーリングをするみたいだと例え話をあげています。結果はライトを付けてから(プロジェクトが終わって評価してみて)しかわからないということです。

リアルタイムでのデータの収集と分析、それに応じた修正が必要だと言っています。企業であれば当たり前のことが、非営利業界ではそのプロジェクトという仕事の仕組みのせいで、行われていないのです。

もちろん自前の寄付会費やビジネス収益などでのプロジェクト運営であれば自由に小回りを利かせてプロジェクトを運営することは可能になるのでしょうが。

●ローカル起業家の活用


コーラは農村部にまで製品を流通させるために地元のローカル起業家を育成しています。彼らに少額のローンを与えて、製品を売り、そのローカルの人が農村部まで製品を運んで売るのです。

これは途上国ならではの必要性から生じています。日本やアメリカといった先進国であれば大型トラックでの配送を行うことが時間的にもコスト的にも最も効率的です。しかし途上国ではもちろんこの戦法は通じません。農村部にはしっかりとした道がないのです。しかし農村のお店、グロッサリーには色んな製品がおいていたりします。これはこのグロッサリーのオーナーが都心部まで出かけて行って製品を購入して、帰って売るからです。このシステムと同じように、ローカルの人にコーラを買って運んで売ってもらうという仕組みをコーラは達成しているのです。ちなみにウガンダやタンザニアではこのローカル商人による販売がコーラの全体の販売の90%を越えているとのことです。

これに近い非営利活動の例として2003年に導入されたエチオピアのヘルス・エクステンション・プログラムがあげられています。35000人のヘルス・エクステンション・ウォーカーを訓練して、農村部などでも簡単な医療が受けられるようにしたのです。途上国ではヘルス・センター等の施設までのアクセスが悪いことが少なくありません。その問題を解決し、村々で治療を受けられるようにしたのがこの制度なのです。その結果として、エチオピアでは2000年?2008年の間で子供の死亡数(Child mortality number)が25%も下がったとのこと。

実はマラウイにもこれに似た仕組みがあります。各村々にHSA(Health Surveillance Assistant)と呼ばれる人が配置されています。各村の人を教育してボランティアベースでHSAになってもらうのです。彼らから受ける治療はもちろん無料です。しかし実際機能しきっていない部分もあります。かなり多くの人数を一人が担当しなければならなかったり、ボランティアベースなので活動のモチベーションがあがらなかったりするようです。彼らの有効性ももちろんないわけではありません。医療行為以外にも村に調査にいったりするときは村長さんの許可のもと、HSAにコンタクトをとって住民に聞き取りを行ったりします。そういう際は彼らはアローワンスと呼ばれる手当をもらえたりするのでボランティアベースではあるのですが、実益もあったりします。有給なのか、ボランティアベースなのか等エチオピアの事例を深く学べばマラウイに応用できるような気もします。

●マーケティング


コーラが成功している最も大きな理由は、「人がコーラを欲している」からだとメリンダは言います。コーラはいかに人に商品を欲してもらうかというマーケティング・キャンペーンがとても上手だと言います。その一つの例として「Wavin’ Flag」という南アフリカ・ワールドカップのテーマ曲の詩を挙げています。ウォーウォーウォーウォウォ、ウォウォウォウォ、ウォーウォーウォーウォウォというやつです。18の国の言語に訳され、17の国のヒットチャートで1位を獲得したらしいです。

どうすれば人々がその製品やサービスを欲するようになるのか、ということを考えてキャンペーンを展開することはNGO等非営利での活動にも大切なことだと言っています。例としてはインドでのトイレ設置キャンペーンを挙げています。トイレを設置してそれを使用することは衛生面からとても大切なことなのです。どうすれば、トイレを設置し、そして使うようにすることが出来るのでしょうか。

インドのある地域の女性が結束して、トイレのない家にはお嫁にいかないと示し併せて、それが新聞にも取り上げられて大きな話題を呼んだという事例が取り上げられています。男性はもちろんトイレの設置を渇望します。結婚するために。

いかにして人々にその製品やサービスを渇望させるかということがマーケティングの重要な視点だと彼女は述べています。

残念ながら動画は途中で終わっているのですが、上記からだけでも十分に彼女の言いたいエッセンスを抽出することは出来ます。

営利と非営利のクロスが途上国でこれからもっともっと大切になってきそうです。

●がしかし、実際に適応するのはなかなか難しい

実際マラウイで製品のマーケティングを行っているとこれらの要素がとても大切だということを強く感じます。私が青年海外協力隊として派遣されているPSI(Population Service International)はコンドームやORS、蚊帳といった保健系製品の販売も行っています。

第一にリアルタイムデータですが、PSIはベースがNGOなのでやはり販売管理も強いとはいえません。以前日本の企業で営業マンをしていましたがその時は日々進捗率を確認して詰められていました。それに比べるとかなり販売数字に関して組織体質的にそもそもの関心が低い部分があります。製品販売以外にも啓発プログラムなど様々な事を行っているのがその背景にはありますが。

第二に流通チャネルは本当に悩みどころです。私が担当している製品はかつては助成金がついており、安価で販売出来ていました。しかし、助成がなくなり価格を挙げざるをえなくなり、販売数が落ちました。問題の一つはこの価格なのです。しかしこの販売価格にはネガティブの比例があります。農村部に行けばいくほど、販売価格が上がるのです。大規模な卸売に売り、卸売りは都市の小売に売ります。そして都市の小売りまで農村部の商店から買いに来て、村に持ち帰る売るのです。つまり中間マージンが多くなり、都市部では100クワチャ(約25円)前後で売られている製品が、下手をすると200クワチャ(約50円)まで上がってしまうのです。農村部の人の方が収入が少ないのですが、彼らの方が負担するコストが高くなってしまうのです。所謂BOPペナルティ(BOPペナルティーとはなにか Vol.50)です。農村部の人に購入して使ってほしいのですが、価格が高くなってしまって難しいという問題があります。

第三に製品を強く欲しいと思ってもらえるかです。お金を持てばまずは食糧、携帯電話のユニット等に消えていくのが現状です。その中で優先順位が低い保健衛生製品を強く渇望してもらうというのはなかなか難しい部分があります。コーラ等、嗜好品とは需要喚起の仕方を変えていかなければならないのだと感じています。

重要だけれども、それを適応する段で色々と悩んでいるというのが正直な私の現実です。
最高なキャンペーンで需要を喚起して、チャネルを改造して、日々のデータをベースにした行動をする組織体質に作り変える。なかなか大変です。うーん。。

かつろう

◆併せて読みたい記事◆
Vol.67 おススメTED その2後編?HIVの感染率と輸出量の関係?Vol.66 おススメTED その2前編?アフリカでHIVが減らない理由?Vol.53 おススメTED紹介 その1?アフリカへの投資?

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