ゆずれないもの~マレーシアのぼったくりタクシードライバー~ Vol.22

マレーシア4日目。朝クアラルンプールを出発して世界遺産のマラッカを一日観光し、その日のうちにクアラルンプールに帰ってくる。クアラルンプールとマラッカはバスで二時間の為にこのような日帰り旅行が可能なのだ。

トラブルはクアラルンプールのバスターミナルから宿泊しているホテルに帰るタクシーで起こった。
ホテルからバスターミナルまでは10分くらいで、朝タクシーで向かったときは約8リンギット(1リンギット=約30円~35円。)だった。しかし夜、バスターミナルからホテルに向かっているとタクシーのメーターは8リンギットなんかを優に超えてグングンと上がっていったのだ。そもそも出発の時点で6リンギット(普通は3リンギット)で、僕はそれをドライバーに抗議したが、彼はバスターミナルから出発するタクシーは6リンギットなんだと言い、違和感を覚えていた。

結局ホテルに着いたときは約42リンギットだった。5倍以上である。途上国でよくメーターをいじっているタクシーがいる。通常の数倍~10倍くらいの勢いでグングンあがるのだ。しかしだいたい相場感はわかっているので降りるときに普通の価格に少し色を付けるくらいで渡すとメーターは全く関係なしに値段の折り合いをつけられることが多い。お互い暗黙的にこのメーターは今使われるべきでないというのを察するのだ。

だから今回も10リンギットを渡した。こちらの想定ではドライバーは20リンギットを要求してきて、結局15リンギットで折り合いをつけるという算段だった。
しかし彼はなんと切れだした!怒り出したのだ。パフォーマンスかどうかは不明だが。少なくとも恫喝をすれば多くの観光客はそれにおされてお金を払ってしまうのだろう。
そして彼はその勢いのまま僕が渡した10リンギットを3つに破いたのだ!幸いにもお札に書かれている人の顔は切れずに済んだことが不幸中の幸いか。

今回は少し良いホテルに宿泊をしていたので周りのドアマンやガードマンがそれを見ていた。一つの教訓としてやはり交渉ごとの際は激昂しないことだ。なにを主張しようが、正当性に欠けるように見えてしまうからだ。

ドライバーは恐らくマレーシア語で周りのドアマンやガードマンに自分の正当性を主張していた。後から彼らに聞くには、彼は2時間走ったとか、30分以上走ったとか、そんなことを言っているらしい。

僕は徹底抗戦を決めた。色んな理由はあるが、一番大きなのはやはり、この行為が僕の中で“ゆるせないこと”だからだ。一つには正当性を欠いているということ。もう一つには僕自身をぼったくることが出来るカモだと舐めたことだ。自尊心が人一倍強く、不公平なことが大嫌いというのが昔から性根にある。

一旦ホテルの人が仲裁に入ってくれる。僕はホテルのロビーで待機し、ドライバーは駐車場の奥に連れて行かれる。ホテルの人が僕の所にやってきて事情を聴く。
僕は状況を全て話した。朝はホテルからバスステーションまで8リンギットだったこと、しかし帰りは40リンギットを越えていること。どちらも10分程度の乗車時間だったこと。これは明らかに正当な価格じゃないから払えない。

そしてそれをドライバー方に伝えてまた戻ってくる。ドライバーはメーターを使用して出た価格だからと正当性を主張しているようだった。そして出発した時間、到着した時間、走った距離、支払額が記載されたレシートのようなものを発行して持ってきた。それには約25分間乗車していたとの旨が記されている。明らかにおかしい。この手の証書は簡単に偽造出来る。新宿の普通を装った居酒屋で請求額が1万円以上上乗せさせて請求されてきて切れたのはまた別の話だが、日本でもこのようなレシート詐欺にあっていたので、機械が弾き出すものを信頼する気は毛頭なかった。

その紙を見せられるも、わかりました、では警察を呼んでくださいで応答。伝家の宝刀、もろ刃の刃を使う。これを使用した場合、場合によっては時間と体力を大変浪費してしまう。しかし負ける可能性は全く考えていなかった。そもそも彼のやっていることは違法であるという認識があったからだ。メーターを5倍に設定できるなどあり得ない。深夜料金だからとか、ターミナルだからだとかの価格設定でも1.25~1.5が妥当な範囲内だと思ったからだ。またこういうことをするタクシードライバーはやましいことを他にも抱えている可能性が高い。タクシーのライセンスがなかったり、そもそも車のライセンスを持っているかどうかも怪しい。ちなみにこの伝家の宝刀を使う場合はタクシードライバーに警察を呼ばせてはだめだ。なぜなら彼と癒着している警察を呼ぶ可能性があるからだ。信頼できる現地の第三者に呼んでもらわねばならない。

あー、警察が来て事情を説明するとかなったら面倒だな。あと30リンギット(約900~1000円)払ってればよかったのに、なんてめんどくさい性格をしているんだ。そもそも明日の飛行機に乗れなかったらそれこを数万円の損失じゃないか。とか考えながらロビーで待っているとホテルの方がやってきて“ドライバーは去っていきました”と。
一安心。

ところでマレーシアはとても発展している。首都クアラルンプールには整備された道路が行き渡り、そごう等の百貨店もある。人々もとても機能的に作用している。ギラギラした目や土埃を感じることが少なかった。どこか行儀のよい国という印象を持っていた。

しかし日本への出立の前夜上記の事件に出会う。たしかに腹立たしかったし、疲れた。しかしハラハラして、頭をフル回転させるスリルはやはり他には替えがたい。

利益やメリットを度外視して、妥協せずに強く主張出来るものが自分の中でゆずれないものなのだと感じた。そしてそのようにゆずれないものを認識していくことで自らの進む方向性が明白になってくるのだろう。

かつろう@ka26oo

 

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