NPOの限界?株式会社か、NPO法人か? Vol.25

以前ある社会企業家と呼ばれる方の講演会を聞きに行った。
途上国である製品を生産して日本で販売をしている事業を営んでおられる方だ。

講演の最後に質疑応答があったので僕は質問をした。

Q、『株式会社として事業を始めてらっしゃいますが、始める際にNPOにするか、
株式会社にするかで悩まれることはなかったですか?』

A、『悩みませんでした。市場に認められる高品質の製品を作ろうと思ったので
株式会社しか考えませんでした

この答えを聞いたときにNPOの一つの限界を感じた。

さて、事業を始める時にNPO法人にするか、株式会社にするかという選択は
どういう軸で考えるべきなのだろうか。

【資金調達・収益構造の軸】

例えば資金調達という観点だと株式会社は株式を発行して
資金を集めることが出来ることが大きなメリットと言える。
しかし収益は事業収入が中心となる。

対してNPOは株式を発行出来ないが事業収入の他にも、
寄付・会費、助成金・委託金といったといった多様な収益構造を持つことが出来る。

【お金持ちの軸】

また株式会社は例えばIPOによってお金持ちになることが出来るかもしれないが、
NPOはそもそも株式がないので上場してお金持ちになることは出来ない。

【ミッションの軸】

株式会社は株主に対しての責任を果たすこと、行ってみれば利益を上げることを求められる。
それと合わせてミッションを果たすことも必要だ。
利益とミッション、双方を達成することが株式会社の責任だと僕は考える。

対してNPOはミッションを果たすことが最優先だ。
その為の手段として収益をあげたり、ブランディングとしての事業を行ったりすることがあるが
あくまでもそれは手段としての利益・事業であって、ミッションとしてのそれではない。

【統治の軸】

株式会社は株式を多くもつことで組織に対しての権限を持つことが出来る。
NPOでその株式に相当するのは正会員にあたる。
つまり組織に対する議決権は正会員が持つのだ。株式会社との大きな違いは、
株式会社は個人での株式の保有株数に制限がないが、NPOはいくらお金を出したとしても
一人一株(1正会員の権利)しか持てないのだ。つまり正会員一人一人が同様の権限を持つのだ。

さらに原則的にNPOは正会員の入会を拒むことが難しいので、
株式会社とはタイプは違うが言ってみれば、乗っ取りのリスクも内包している。

上記のような様々な軸を検討した上で自らがやりたいことと
照らし合わせて法人格を選択すべきだ。

『市場に認められる高品質の製品を作ろうと思ったので株式会社しか考えませんでした』
というコメントは下記の前提を含んでいる。

・株式会社は高いレベルで事業をオペレーションすることができ、アウトプットも素晴らしい。
・NPOは事業オペレーションが苦手でアウトプットも低い。

この認識は間違っていると言える。NPOでもとても質の高いサービスを提供している組織もある。
例えば病児保育事業を行っている認定NPO法人フローレンス(http://www.florence.or.jp/)は
事業型のNPOとして名高い。
事業収益によって組織を運営しており、その提供サービスも顧客に認められている。

このような誤ったNPOに対する認識がNPOの限界を作っているように思う。

例えば株式会社に比べてNPOの方が社会的な信頼が低い。
株式会社の社員もNPOの職員も分野が違うだけでどちらもプロフェッショナルのはずだ。
しかしNPOと聞くとどこかボランティアの匂いがする。
給料に関してもそうだ。NPOは清貧たれという感覚を持っている人がいる。
寄付者よりもNPO職員の年収が高いことがあり、それを寄付者から指摘されたという話も聞く。

こういったNPOに対する誤解が未だ日本には蔓延している

繰り返すが株式会社とNPOは組織形態、
ミッション等が違うだけでどちらもプロフェッショナルの集団であるのだ。
むしろ収益性と社会性を両立させなければならない場合などはNPOや
社会企業の方がより能力や専門性を求められることもあるのだ。

この先どんどん“イケてる”NPOが日本で増えて行って、
NPOに対する社会の認識が変わっていけばNPOの限界もなくなると思う。

かつろう

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