BBBEEとは何か?~現代南アフリカを紐解く鍵~ .161

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(ツイッター@ka26oo)

現代の南アフリカを語る上で忘れてはならないのがBBBEE(B-BBEE)です。Broad-Based Black Economic Empowermentの略です。ちなみに略語の読み方はビービービー・イーイー、トリプルビー・イーイーもしくはトリプルビー・ダブルイーです。

一言でまとめてしまえば、黒人優遇政策と言えます。所謂Affirmative Actionの一種と言えます。”黒人”優遇政策と書きましたが、ここで対象とされている人はPreviously disadvantaged peopleと呼ばれるグループになります。Previouslyとはアパルトヘイト時代を指します。つまりアパルトヘイト時代に人種に基づく差別的な政策で不利益を被った人々のことで、黒人の他にインド系のアジア人や黒人と白人の混血(カラード)なども含みます。また1994年がアパルトヘイトの終焉になるので、1994年以後に南アフリカ国籍、もしくは市民権を取得した黒人らはこの優遇政策の対象にはなりません。(もちろん親がこの対象であれば1994年以降に生まれたとしてもその子供も対象となります。)

*この文章で黒人と述べた場合は他のPreviously disadvantaged peopleも含むものとします。Black Empowermentと名付けられているので便宜上黒人と呼ぶことにします。

●BBBEEの歴史

まずこの政策は三段階に分かれます。最初期に実施された政策がBEE(Black Economic Empowerment)です。この政策は2003年~2007年に実施されましたが、この政策で利益を得たのはPreviously disadvantage peopleの中でも中上級階級や特権階級の人たちだけでした。その反省をもとに発展させらのがBBBEE(Broad-Based Black Economic Empowerment)になります。ここで言うBroad-Basedとは中上流の人たちだけではなくて、ボトム層の人達も包括的に幅広くという意味でのBroad-Basedになります。2007年~2015年までがPhase 1になり、そして今年からはPhase 2に移っています。つまりBEE→BBBEE(Phase 1)→BBBEE(Phase 2)と移り変わって来たのです。

●BBBEEのランク

具体的に現在施行されているBBBEEの内容を見ていきたいと思います。まずは大枠を説明しますと、企業が黒人優遇度合によってランク付けされます。このランク付け指標一覧表のことをScorecardと言います。Level1~Level8、そしてNon-compliantの9ランクに分けられ、Level 1が最も良いランクになります。企業は下記に列記した指標を元にランク付けされます。

●BBBEE(Phase 2)のスコア構成要素

大きく分けると6つの指標で判断されます。(この6つのカテゴリー内でさらに細かく評価項目と評点配分があります。)

1,Ownership

株式の内、何パーセントが黒人または黒人が所有する会社に保有されているか等の実質的な所有権に関わる項目。

2,Managiment

ボードメンバー(取締役)やシニアマネジメントに何人黒人がいるかといった企業のマネジメントに関わる指標。

3,Skills development

社内でのトレーニングの実施状況など。

4,Enterprise & Supplier development (Preferential procurement)

取引している会社のBBBEEのランクが低ければ、当該会社のランクも低くなる。以前はEnterprise developmentとpreferenctial procurementが違う項目だったようですが、統合されたようえす。

5,Employment equity

従業員の人種やジェンダーのバランス。一定数以上のpreviously disadvantage peopleを雇わないとランクが低くなる。

6,Socio-economic development

税引き後の利益の1%を社会貢献活動に費やしているかどうか。

●ランクが低いと何が問題なのか

ランクが低いと政府の入札に参加することが出来なくなります。ただし入札に必要なランクも業界などによって変わるので一概にランクが何以上必要ということは言えないようです。そしてランク付けの肝となる要素が上記に挙げた4,Enterprise & Supplier development (preferential procurement)になります。ランクが低い会社と取引をすると自社のランクまでが下がってしまうという仕組みになります。つまり政府と取引のある企業はランクを下げたくないので、ランクが低い企業と取引をしたくないと考えます。そしてその2次の会社は、ランクを下げたくないのでランクの低い3次の会社とは取引したくなくなるというように波及効果を生むことになります。

逆に言えば政府との取引から遠い位置にいる会社はそれほどBBBEEのランクに気を遣わなくてもよいということになります。ケープタウン大学MBAのクラスメートに日本でも有名な某グローバル消費財メーカーのマーケティング担当がいるのですが、彼女曰くその会社はBBBEEはほとんど気にしていなかったとのこと。消費財メーカーという性質上、政府からは遠い距離にいるのでランクが低くても不利益をこうむることが少ないとのことでした。ただし社風として、社内の従業員の多様性は自然と高かったらしいです。

 

●業界や企業規模による違い

上記のスコアカードによる評価方法は一般的な評価になりますが、評価の比重や指標などは業界によっても異なるようです。例えば鉱山業界はMining Charterという規約によって縛られているようです。例えば建築業界は女性従業員が必然的に少なくなる傾向にあるので、小売り業界と同じ指標では計ることが出来ないといったような感じです。

また企業規模によってもスコアやレベルの適用度合が違うようです。売り上げが10 million Rand(7000万~8000万円程)以上の会社であれば上記Scorecardによるランク付けが基本的には適用されますが、それ以下の中小企業になるとスコアが悪くてもランク4でとどまることが出来るようです。

 

●ミクロの影響~人種による給与の差

このBBBEEによって黒人やインド系、混血の人々が優先的に仕事にも採用されるということがあります。企業としてはBBBEEランクを高く保つ為に積極的にPreviously disadvantaged peopleを採用するというわけです。白人と黒人で同じ能力なら黒人が採られることが間違いなく多いです。

さらに同じポジションに白人と黒人がついていた場合、黒人の給与の方が高くなる傾向にあります。これはスキルレベルの高いPreviously disadvantaged peopleの人材不足に原因があります。アパルトヘイト時代の負の遺産で、教育をしっかりと受けて職務経験も積んだ優秀な黒人の数は少ないのが現状です。黒人で尚且つスキルが高い人はかなり人気で、すぐに高い給与で引き抜きにあったりします。その人材を社内にとどめておくために給与も必然的に高くなるということが多いようです。

●マクロの影響

上記で述べた個々人のミクロの問題だけでなく、BBBEEがマクロに経済に与えている影響はとても大きいと言えます。(ここでいうマクロは大規模にという意味で厳密なマクロ経済とは違います。)例えばアフリカ10か国に500店舗ほど展開しているSpurというJSE(南アフリカの証券取引所)に上場しているレストランチェーンがあるのですが、2015年のアニュアルレポート(http://www.spurcorporation.com/financials/ar/2015/downloads/integrated_report2015.pdf)を見てみると、
CONSOLIDATED STATEMENT OF FINANCIAL POSITION(所謂バランスシートのこと)のTotal Equityの項目が519 million Rand(2014年)から854 million(2015)に一気に増えています。これは当時のレートで換算すると日本円にすると30億円以上の増加になります。これはBBBEEのオーナーシップの項目のスコアをあげる為に、Grand Parade Investmentという会社に新規株式発行を発行したことが原因です。上記に述べたようにオーナーシップの比率は株式を黒人が持つ、あるいは黒人の所有する会社が持つということによって評価されます。このGrand Parade Investmentという会社は黒人が所有する会社であるということが読み取れます。この例からもわかるように、BBBEEは株価や企業統治、政府との取引と言ったマクロレベルで経済に大きな影響を与えていると言えます。

 

ただしこのBBBEE政策が、本当の貧困層にプラスになっているかは議論の分かれる所のようです。中級層や高所得者層といった黒人には間違いなくプラスの影響が出ているということは言えます。しかしタウンシップ(所謂スラムのような低所得者の住む場所)に住む低所得者層の生活にどれだけ直接的な影響があるかは定かではありません。何故なら低所得者層の多くはinformal sectorに所属しており、大企業やしっかりとした雇用とは無用だからです。彼らも巻き込むという意味でBroad-Basedという言葉がついていますが、その目的が達成されたかは単純には語れないようです。約25%と高く推移している失業率からも低所得者層の厳しい現実を読み取ることが出来ます。

かつろう@ka26oo

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