途上国の営業研修その3「新規顧客開拓」 .126

青年海外協力隊として派遣先のアフリカのマラウイにあるPSI/Malawiで3ヶ月毎に営業マンに対して営業研修を行っています。第1回目は商品展示(Vol.76 途上国で売り上げアップ!商品陳列・展示の営業研修)について、第2回目は製品知識(途上国の営業研修その2「製品知識」 .105)について研修を行いました。

今回は9月末に第3回目として、「新規顧客の開拓」について営業研修を実施したのでその内容をお伝えいたします。ちなみにPSI/Malawiはエリア営業制度を採用しています。マラウイをゾーンと呼ばれる地区に分け、そのゾーンごとに営業マンを配置し、ゾーンにある新規・既存どちらも担当させるという方式です。この方式をとる以上、全ての営業マンは新規顧客開拓の必要に迫られることになります。

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本題に入る前に前回、前前回行った研修内容のレビューを初めに行いました。一度研修を受けただけでは間違いなく忘れてしまいます。少しでも知識の定着を図るためにまずはレビューを行いました。

0、本日の研修の目的の説明

まずは本日の研修の目的を説明しました。目的の第一は新規顧客開拓の重要性を理解すること、第二には新規顧客開拓の方法や知識を共有すること、そして売り上げにつなげることです。

この時のポイントの1つは新規顧客開拓の方法を営業マンの間で共有してもらうとしっかり伝えることにあります。日本であれば新規開拓の方法はある程度わかりますが、マラウイをはじめとしたアフリカでは状況は全く違います。私よりも営業マン達の方が色々と新規顧客開拓の方法を知っているはずです。なので新規顧客開拓の方法を教えるというのではなく、皆が知っている知識や方法を共有するということをはじめのうちからしっかりと説明しておくことが大切になります。あくまでも私自身の役目はファシリテーターとして、議論を活性化させるという部分にあるという共通認識をはじめから作っておきます。

1、売り上げ構造の分解

レビュー終了後、本題の新規顧客開拓に入ります。
まずは売り上げ構造の分解を行いました。

売り上げ=顧客数×顧客辺り平均単価

単純ですが、最も基本的な形で分解しました。
この式を用いて考えた場合、売り上げを増加させるには2つの方法があります。1つは顧客数を増加させること、もう一つは顧客辺りの平均単価を増加させることです。

今回の主題である新規顧客開拓は顧客数を増加させることに繋がると説明します。(ちなみに第一回研修で行ったような商品陳列を改善することは平均単価の向上に繋がります。)

2、顧客の分解

次は顧客を2つに分解しました。既存の顧客と新規の顧客です。顧客数を増加させると考えた場合、既存の顧客数を減らさずに新規の顧客を増やすということが基本的な考え方になります。

そしてこの既存と新規の顧客の比較を行ってもらいました。営業の難易度、営業にかかる時間、売れた時の売り上げの量、それぞれを既存顧客、新規顧客、で比較してもらいシートに記入して発表してもらいました。

基本的には新規顧客の方が、営業の難易度が高く、営業にかかる時間も長くなり、売り上げも少なくなります。以前から購入してくれている既存の顧客の方が簡単に売れます。新規顧客はゼロから自己紹介や商品説明を行わなければならないので営業にかかる時間も必然的に長くなります。また購入してくれることになったとしても、売れるかどうか試すことが必要になるので初めの購入量、つまり売り上げは一般的に少なくなります。

3、新規顧客開拓の必要性、重要性

新規の顧客の方が既存の顧客に比べて売るのが難しく、時間もかかり、売り上げも少ないということがわかりました。その上でどうして新規顧客開拓が必要なのかを考えてもらいます

4人のグループに分かれてもらって各グループ毎に最低でも3つ以上の理由を考えてもらいます。何故新規開拓が不可欠なのかをグループで討議してもらいます。意見をまとめて紙に書いてもらい各グループごとに発表してもらいます。

このセッションのポイントは重要性を自ら考えてもらうことにあります。単にこっちから新規開拓の重要性を伝えるのではなく、自分の頭をひねって答えを出してもらいます。もちろん答えは一つではありません。色んな意見が出て来ます。それらを基本的には全て肯定し、新規顧客の大切さを理解してもらいます。

意見としては、売り上げを向上させる、既存客だけでは顧客数は減るのみ、例え売れなくても商品認知度を広げることに繋がる、製品のカバー地域をあげる等々が出てきました。新規顧客を開拓しようとすることで、例え売れなくても商品の認知度を広げることが出来るという意見などは面白いなと感じました。

4、新規顧客開拓の方法、スキル、知識の共有

次は実際に新規顧客を開拓する方法や知識を共有してもらいます。前のセッションと同様に4人のグル―プに分かれてもらい、議論し、紙に書いて発表してもらいます。

・まずはどうやって新規顧客を見つけるか
・そしてその顧客に対してどのようなアプローチをとれば良いのか
という2点を議論の切り口として提示しました。

新規顧客の見つけ方としては、ラジオ、新聞、TV等のメディアに載っている店舗の広告や情報などを活用する、営業マン同士や職場の人、外部の人などと関係を構築し情報を常に得る、知っているお店を紹介してもらう、市役所に行って登録している店舗のリストを入手する、等といった意見が出ました。

アプローチ方法としては、長期的にどうやって関係を築いていくかということを考えて欲しかったのですが、問い方がまずく、初めてのお客との会話の具体的な展開や流れを各グループともが考えるという結果になりました。これはこれでよかったのですが、問いかけ方法は要反省でした。

このセッションの締めとして単純接触効果(Mere-exposure effect)を紹介しました。人は単純に、接触を重ねた相手やものに好意を持つという原則です。良く会う人に好意を抱きやすいということです。この原則を新規顧客開拓に当てはめると、一度断られても通い続けることで、顧客に好意を持ってもらうことに繋がり売りにつなげる事が出来るということになります。めげずに通い続けようというメッセージを伝えました。

時間がなくてさらっとでしたが、他にも営業ツールの重要性の説明も行いました。新規顧客開拓には名刺や提案書を効果的に使うべしということです。

5、まとめ

まとめのメッセージに、2014年サッカーワールドカップのブラジル対ドイツ戦を引き合いに出しました。何故ブラジルはドイツに大敗したかということを問いました。もちろん答えは色々とあるのですが、攻撃の要のネイマールと守備の要のジエゴシウバが出場できなかったことが大きな要因の一つと言えます。攻めと守り、双方がとても大切なのです。

営業もサッカーと同じく攻めと守りが大切です。攻めとは新規開拓、守りとは既存顧客の継続です。今回は新規顧客開拓を中心に研修を行ったけれど、既存顧客を如何に守るかということもとてもとても大切です。この2つどちらも出来てこそ、売り上げを拡大していけるのです。ということをまとめとして伝えて研修を終了しました。

当日使ったパワーポイント等の資料を必要な方がいらっしゃればこのブログにコメントして頂くかフェイスブックページにご連絡下さい。途上国での活動に少しでも参考にして頂ければ幸いと考えます。

かつろう

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